ミニマルで上質。だけど、ただのシンプルでは終わらない。そんな哲学を感じさせるシャツ「HIKARU」を、今回じっくりレビューしていきます。
この記事では、TOKIARIの定番人気シャツ「HIKARU」について、デザインや素材、サイズ感、着用感を実際に体験したうえで、本音ベースで詳しくご紹介。シルク混リネンを中心に、他素材との違いや、コーディネートの相性、洗濯後の変化までリアルに語ります。
「ミニマルなシャツって、正直どれも似てるでしょ?」
そんなふうに思っている方にこそ、ぜひ読んでほしい内容です。
TOKIARIとは?ブランドの魅力と世界観をおさらい
今回レビューするTOKIARI(時在;トキアリ)は、2022年に京都でスタートしたドメスティックブランド。表面的な流行を追わず、「時の在り方」や「心の余白」に寄り添うような服づくりが特徴です。
ブランド名の由来は、旧約聖書『伝道の書』の一節「すべての出来事には時がある」という思想から。「白と黒」「生と死」「出会いと別れ」など、人生における相反する出来事を静かに肯定し、そのすべてに意味を与える服が、TOKIARIの核なんです。
デザイナーは、岩手県出身の中村憲一氏。仏教的な精神性や、自然の移ろいに宿る静けさを美ととらえる感性、そしてセレクトショップのバイヤー経験など、あらゆる背景がこのブランドに反映されています。
こうした深い思想や背景については、以下の記事でより詳しくご紹介しているので、気になる方はこちらもチェックしてみてください。
TOKIARIのシャツ「HIKARU」のディテールを徹底解剖
基本情報

【TOKIARI】「HIKARU」 REGULAR COLLAR PURE NAKED SHIRT - LINEN SILK
項目 | 内容 |
---|---|
ブランド名 | TOKIARI(トキアリ;時在) |
アイテム名 | HIKARU(ヒカル) |
型番 | HIKARU-LIS-100-BK |
価格 | 36,300円(税込) |
素材構成 | リネン 38% / シルク 62%(経糸にリネン、緯糸にシルクネップ糸を使用) |
カラー展開 | BLACK・PEAL-WHITE |
サイズ展開 | 1・2(L~XL相当、詳細はブランド公式サイズ表を参照) |
生産国 | 日本 |
洗濯表示 | 液温は30度を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる。 |
デザイン:装飾性を省いた美学
「HIKARU(ヒカル)」は、装飾を削ぎ落とすことで本質を際立たせる。そんな静かな強さを宿した一枚です。
まず注目したいのは襟のデザイン。ほんのわずかに短く設計されたレギュラーカラーは、シャツの印象を引き締めつつ、全体にミニマルな空気をまとわせています。襟の長さが短いと子どもっぽく見えると思うかもしれませんが、HIKARUではボディとのバランスを緻密に計算しているため、むしろ大人の余裕すら感じさせる仕上がり。
そして胸ポケットはあえて「なし」。これは単なる引き算ではありません。ポケットをなくすことで、シャツ全体の面としての美しさが際立ち、着る人の雰囲気や素材そのものの表情が際立ちます。
細部へのこだわりは、カフスやボタンといったパーツにも及んでいます。
まず注目したいのがカフスの形状。HIKARUでは、カフスの両端をわずかに斜めに落とした「角落ち」デザインが採用されています。
この絶妙なカットは、ほんの少しの変化ながら、袖先にエレガントでシャープな印象を添えてくれます。無駄を削ぎ落とすというコンセプトのもと、直線的すぎずやわらかな輪郭を描くことで、腕まわりに自然な抜け感を演出しています。
さらに、ボタンには「水牛ボタン(黒)」を使用。天然素材ならではの控えめなツヤと深みのある質感が、シャツ全体の佇まいに上品さをプラスしています。ボディの生地色とトーンを揃えたミニマルな配色も相まって、主張を抑えつつ、全体の統一感を高めるディテールに仕上がっています。
素材:時をまとったような、上質ヴィンテージの風合い
HIKARUにはいくつかの素材バリエーションがありますが(※詳しくは後ほど詳しく紹介)、本記事でレビューしているのは「リネンシルク」と呼ばれる特別なファブリックです。
この素材の魅力を一言で表すなら、「まるで時間をまとっているかのような、洗練された格好良さ」。シャツをまとった瞬間に感じるのは、肌にやさしく触れるしっとりとした質感と、目に映るナチュラルで奥行きのある表情です。
その秘密は、経糸に上質な60番手のリネンを、緯糸に贅沢なシルクネップ糸を使用している点にあります。ネップとは、糸の中に不規則に現れる小さな節(ふくらみ)のこと。あえてこのネップ感を活かすことで、布地に独特のムラ感や立体的なニュアンスが生まれ、どこか「着古した雰囲気」を漂わせる表情へと昇華されています。
新品なのにヴィンテージのような趣を持つ、不思議な奥深さが、このHIKARUのリネンシルクにはあります。
品質:細部に宿る、誠実なものづくりの精神
HIKARUは一見シンプルなシャツですが、細部に目を凝らすと、とても丁寧に縫い上げられていることが伝わってきます。日本・滋賀県の職人によって丁寧に仕上げられており、そのクオリティはまさにMADE IN JAPANならでは。
特筆すべきは、ステッチのピッチ(縫い目の間隔)がとても細かく、かつ均一である点。まるで精密機械のような正確さで縫い進められ、曲がりや歪みもほとんど見当たりません。直線もカーブも、迷いなくスッと走るミシン目は、職人の技術と集中力の賜物。
たとえば袖口や脇下、裾など、動きの多い部分も一切の緩みなく仕上げられており、着ていてもほつれやよれはありません。
こうした品質の高さは、普段あまり意識されない部分かもしれませんが、長く着ても型崩れしにくい安心感があります。着るたび、洗うたびにその差がじわじわと実感されていくはず。
着用レビュー|HIKARU(リネンシルク素材)を実際に着た感想
着た瞬間の印象
まず袖を通した瞬間、「あ、これは特別だ」と感じる独特の空気感がありました。
見た目はごくシンプル。けれど、肌に触れたときのやわらかさに、「ただの無地シャツじゃない」とすぐにわかる質の高さがあります。ミニマルなデザインだからこそ、素材の良し悪しがダイレクトに伝わってくるんです。
パリッとしすぎず、でもラフすぎもしない。この絶妙な「抜け感」と「品のよさ」のバランスは、まさに大人の日常着にふさわしいと感じました。
シルク混リネンの肌触り・質感・落ち感
リネン特有のシャリ感に、シルクのしっとり感が加わることで、肌に吸い付くような心地よさがあります。
さらに特筆すべきは「落ち感」。ドレープが自然に出るので、着ていても動きに合わせて生地がやわらかく波打ちます。これが、見た目のエレガントさにつながっています。
ネップ混の風合いはどこかヴィンテージライクでありながら、野暮ったさが一切ない。「ナチュラル」と「洗練」が同居している、とてもバランスの取れた素材感です。
シルエット:リラックスと品の絶妙なバランス
次にシルエット。HIKARUは全体的にゆとりを持たせたフィット感で、いわゆる「オーバーサイズ」とは異なり、身体のラインをほんのりと残すようなパターン設計になっています。
着るだけでサマになる程よいゆとり感で、袖や身幅に適度な余白がありながら、ルーズに見えすぎないのもポイント。一枚で着てもだらしなく見えず、きちんと感と抜け感を両立しています。特に前から見たシルエットは、肩の落ち方がとても上品です。
一方で、個人的に少し気になったのは後ろ姿の着丈バランス。前後差をつけた裾デザインが特徴的ですが、後ろの着丈がやや長めなため、人によってはアンバランスに感じる可能性も。実際には大きな差ではないのですが、「タックインせずに一枚で着る派」にとっては、ほんのわずかに「もたつき」を感じるかもしれません。
とはいえ、これは全体のシルエット設計が意図的に作り込まれている証でもあります。実際に着て街を歩いたときには、動きに合わせて裾がふわりと揺れ、後ろ姿にも表情が生まれるのを実感しました。リネンシルクの生地感とも相まって、静と動の美しさを同時に感じられるデザインです。
シルエットに関しては、着る人の体型や好み、スタイリング次第で印象が変わる部分でもあるので、可能であればぜひ実際に袖を通してみることをおすすめします。
他ブランドとの比較
僕が持っているCOMOLI(コモリシャツ)やYAECA(コンフォートシャツエクストラワイド)と比べると、「全体的にゆったりとしている」という点では共通していますが、TOKIARIの「HIKARU」は着丈がやや長く、身幅がややタイトです。
季節感:春夏ではなく、むしろ秋冬に映える一着
このHIKARUに使用されている素材はリネンシルク。聞いた瞬間、「リネン=春夏」というイメージを抱く方も多いかもしれません。ですが、このシャツはAW商品ということもあり、明らかに「秋冬向け」。一般的なシャリ感のある薄手リネンとは一線を画し、しっかりとした厚みとコシのある生地感が特徴です。
実際に袖を通してみても、風をしっかりと遮る安心感があり、薄手のシャツにありがちな頼りなさは皆無。むしろインナーにカットソーを仕込めば、軽アウターとしても活躍できそうな頼もしささえあります。
また、ネップが生み出すヴィンテージライクな表情と落ち着いた発色も、秋冬コーディネートにぴったり。ウールパンツやツイードジャケットなど、季節感のある素材との相性も抜群です。
洗濯後の変化やシワ感についてもリアルに言及
リネンというと「シワが気になる」と思われがちですが、このリネンシルクはそこまで神経質にならなくてもOKです。
洗濯後は多少のシワが出ますが、それがむしろ味として活きる素材感。リネン100%に比べると、シルクの混率が高いぶんシワの出方もやわらかく、全体の印象を損ないません。
実際に、洗濯機の「おしゃれ着モード」でネットに入れて洗濯してみました。洗濯後の状態がこちら。
ご覧のとおり、風合いのある生地感のおかげで、洗いざらしでもサマになります。ノーアイロンでも十分着られますが、気になる場合はスチームを軽く当てるだけでOK。
毎日ガシガシ着て、気軽に洗えて、それでいて見た目は上質。実用性と美しさを兼ね備えた一枚だと断言できます。
素材によって洗濯方法が異なってきます。詳しくはシャツのタグに記載されている洗濯表示を確認しましょう。ちなみに、リネンシルクの場合は以下のとおり。
- 液温は30度を限度とし、洗濯機で非常に弱い洗濯ができる。
- 底面温度160度を限度としてアイロン仕上げができる
HIKARUのサイズ感と選び方|着用レビュー
シャツ選びで重要なのがサイズ感。ここではTOKIARIの「HIKARU」のサイズ感を徹底レビューしていきます。
まずは、実際のサイズスペックをチェック。
サイズスペック
【サイズスペック(cm)】 | サイズ1 | サイズ2 |
首周 | 43 | 45 |
肩幅 | 49 | 51 |
裄丈 | 88 | 91 |
胸囲 | 121 | 129 |
着丈 | 81 | 82 |
着用者スペック
- 身長:176cm
- 体重:62kg
- 体型:肩幅広めの細身体型
実際のサイズ感
時在服飾設計のスタッフさんからは「サイズ2」をすすめられましたが、手持ちの他ブランドと揃えるかたちでサイズ1を着用してみました。
結果から言えば、サイズ1でちょうど良かったです。
肩幅は少しだけ落ちますが、ドロップショルダーになるほどではなく、自然な落ち感。身幅は適度にゆとりがありつつ、だらしなく見えない。シャツ一枚でトレンド感のあるスタイリングがしやすい絶妙なサイズ感でした。
袖丈に関しても工夫があり、ボタンを閉じれば手首でしっかり止まりつつ、生地がたまって自然な抜け感が生まれます。一方でボタンを開けると手のひらが隠れるくらいの長さになり、着こなしに表情が出せるのも◎。
ただ、サイズ1でも着丈はやや長い気がしたので、気になる方はサイズを上げないほうがいいかもしれません。
結論:どちらを選べばいい?
サイズ選びの目安としては、以下を参考にするとわかりやすいです。
- 175cm以下:サイズ1がおすすめ
- 176cm以上:サイズ2がおすすめ
- ドロップショルダーで着たい場合:サイズ2を選ぶと◎
TOKIARIは男性はもちろん、女性もゆるりと着用できるユニセックス設計です。女性はサイズ1を着用するのがおすすめ。
HIKARUのコーディネート例|TOKIARIのシャツを使った着こなし
ここからは、HIKARUを実際にどう着こなすか?についてご紹介。今回は筆者のリアルスナップを交えて、具体的なスタイリングをお届けします。
【SNAP①】淡色デニム×グレースニーカーの王道スタイル
素材の上質さを引き立てながら、リラックスした雰囲気に落とし込んだスタイリング。リネンシルクのしっとりとした光沢感を、あえてカジュアルな淡色デニムで中和。足元にはグレーのニューバランスを合わせて、「脱・無難」な大人の休日スタイルに。
合わせるアイテムは、意外と自由度が高い
HIKARUのシャツは、シンプルかつ上品な佇まいが魅力。だからこそ、合わせるアイテムを選びません。
- デニムやチノパンでカジュアルに → 程よい抜け感が出て、普段着として取り入れやすい。
- スラックスでクリーンにまとめる → ビジカジやきれいめスタイルにも対応可能。革靴との相性も◎。
- カーゴパンツで男らしさをプラス → 上品さとのギャップが程よくミックスされて、こなれ感がアップ。
また、ジャケットやニットのインナーとしても優秀。生地に奥行きがあるぶん、レイヤードしても単調にならないのが強みです。
HIKARUの素材バリエーションと特徴まとめ
HIKARUの魅力は、シンプルな見た目に反して素材の表情が圧倒的に豊かなところ。実はこのシャツ、季節やシーンに合わせて複数の生地バリエーションが展開されています。
それぞれの素材の特徴を、以下に簡潔にまとめました。
ブロードコットン

【TOKIARI】HIKARU - BROAD COTTON
100番手の強撚(きょうねん)双糸を高密度に織り上げた、まるでドレスシャツのような上質素材。さらりとした肌触りと、自然な光沢が魅力。洗濯後のシワも出にくく、ノンアイロンでも着られるほどの扱いやすさです。
ハードマンズリネン

【TOKIARI】HIKARU - HARDMANS LINEN
1835年創業の老舗ハードマンズ社製。通常のリネンに比べて毛羽立ちが少なく、長繊維のみを厳選することで、しなやかさと耐久性を両立。洗うほどに馴染み、ナチュラルな表情に育ちます。
ヴィンテージオックスコットン

【TOKIARI】HIKARU - VINTAGE OX COTTON
太番手の糸をシャトル織機で時間をかけて織った、素朴でふくらみのある素材。ご家庭で洗える上、洗うほどに風合いが増すので、長く付き合いたくなる一枚です。
各素材の特徴一覧まとめ
素材名 | 特徴 |
---|---|
ブロードコットン | 高密度に織られた100番手の強撚双糸を使用。光沢感があり、さらりとした肌触り。上品ながら洗濯耐性も高く、ノンアイロンでも着用可。 |
ハードマンズリネン | 英国の老舗が手がける高級リネン。長繊維のみを使用したなめらかで光沢のある仕上がり。使うほどになじむ。 |
リネンシルク | 経糸にリネン、緯糸にシルクネップを使用したヴィンテージライクな風合い。落ち感としっとり感が共存する稀有な素材。 |
ヴィンテージオックスコットン | 太番手の糸をシャトル織機でゆっくり織り上げた素朴な風合い。ナチュラルでふっくら、洗い込むごとに味わいが増す。 |
形は同じなのに、素材が変わるだけでまったく異なる表情を見せてくれるのがこのシャツの面白さ。好きな素材感やシーズンで使い分ければ、見た目と実用性を両立できます。
TOKIARIのHIKARUをおすすめしたい人/おすすめできない人
最後に、HIKARUがハマる人/そうでない人を整理します。
HIKARUをおすすめしたいのはこんな人
素材フェチ/生地オタクな人
季節に応じた上質な素材を楽しめます。とくにリネン×シルクネップという組み合わせは希少。風合いや経年変化を楽しめるのは素材好きにとってたまらないポイント。
ミニマルなデザインが好きな人
装飾やロゴを排し、ディテールと素材で魅せる設計。静かに語るような美しさが好きな人には刺さります。
一生モノを育てたい人
大量消費ではなく、手間をかけて育てていきたい人に。丁寧に作られた日本製だからこそ、長く愛用する価値があります。
HIKARUが合わないかもしれない人
今っぽさ全開のトレンド重視の人
ビッグシルエットや装飾的デザインのような映えるトレンドを求めているなら、少し物足りなく感じるかも。
とにかく安く済ませたい人
生地も縫製も一級品なので、価格は決して安くありません。「コスパ重視」で服を選ぶスタンスなら、選びづらいかもしれません。
派手な服が好きな人
HIKARUは無地で色味も落ち着きがあり、スタイルとしては控えめ。主張の強いアイテムが好きな人にはマッチしづらいかも。
トレンドに左右されず、10年後にも着ていたいと思える一枚。それがHIKARUの魅力。だからこそ「何を重視するか」を自分の中でハッキリさせておくと、買ってからの満足度もぐっと高まります。
まとめ|TOKIARIのHIKARUをレビューしてわかった本当の魅力
今回、TOKIARIのシャツ「HIKARU」を実際に手に取って着てみたことで、あらためて強く感じたことがあります。それは、このシャツは派手さではなく「奥行き」で魅せる一着だということ。
SNSで映えるようなトレンド感や、パッと見のインパクトはないかもしれません。でも、袖を通して鏡の前に立ったとき、ふとした角度で見たとき、毎日何気なく手に取ったとき……じんわりと魅力がにじみ出てくるんです。
ミニマルなデザインだからこそ、上質な素材の良さが活きてくる。そして今後の経年変化も楽しみな一着です。
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